2019年2月21日木曜日

副作用が口内炎?

ちょっと時事ネタっぽいのを。
堀ちえみさんが「普段飲んでいる薬の副作用で口内炎ができるから」という理由で発見が遅れたという話がありました。
これを聞いて「ああ、リウマトレックスですか」と薬屋は薬を察することができるのです。
成分名がメトトレキサートという名前、先発の商品名がリウマトレックスというもの。
名前の通りリウマチに使う薬なんですが、がんとかにも使ったりします。
今回はこれについてどんな薬かを書いてみましょう。
難しいことをざっくり省いて説明すると
細胞が増えるにあたって、DNAの複製ってのができないと先に進みません。
DNAコピー機みたいなものがあって、それの潤滑油ってのが葉酸というものがあったりします。
このメトトレキサートという薬は偽潤滑油みたいな感じなもので、これがあるとコピー機が動かなくなります。
がんにしてもリウマチにしても過剰にコピー機が動いている状態だったりするのでちょっと弱めてやることで、がんが増えにくくなったり
リウマチの症状が進まないようにすることになります。
ただ、毒薬みたいなもんなのでリウマチの場合は正しい潤滑油を定期的にさす必要があります。
具体的には月曜に偽物、水曜に本物みたいな感じで使います。
さて、これがなんで口内炎につながるかと言いますと
・メトトレキサートが割とすべての細胞に対して無差別に効果があること
・口の中というのは細胞の再生、っていうか細胞の回転が早いこと
がん細胞ってのはとんでもなく再生スピードが早いわけで、コピー機故障の影響が強く出ます。
それと同じ理由だと思ってもらえればわかりやすいのかもしれませんね。
髪の毛とか口内炎とか、回転サイクルが早い所は抗がん剤使うとダメージがでかくなるというわけですね。
他の副作用として、免疫関連のダメージからかぜを引きやすくなるとかあったりします。
飲み合わせのうるさいし、致命的な副作用もあるので注意が必要な薬。
わたくしが薬剤師になったころには使える医師が結構限られてたし、問屋もどこからの処方ですか?という問い合わせも多かったです。
今だと当たり前に使われますが、当時は自分が新人ということもあって、結構ビビりながらだしてたもんです。
と今回はここまでと、普段はなるんだけどちょっと書きたいことがあるので追記。
ツイッターにも書いたんですが、今回の堀ちえみさんの件は歯科医とかは責めれんよなぁと個人的には思います。
例えば
風邪、もしくはインフルだと思って医者にかかったとする。
そうした場合そのあたりは調べるんだけど他のところはなかなか調べません。
インフルので陽性ならばインフル、そうでなければ風邪と診断して対処するということになると思います。
今回の例だと上記の薬のミスリードってのもあって、発見が遅れてしまったという感じですかね。
これを誤診と言われればどうなのかもしれないけど、その鑑別なり専門医に振るっていうのはそれなりにスキルが必要。
口内炎だろうと疑わなければ振るってのも難しいでしょうし、実際に当たったことない症例なんかは鑑別って不可能に近いと思うし。
よほどの天才医師かわからんことはみんな丸投げにするぐらい無責任な医師でもないと難しいと思います。
これを責めてもいいこともないし、メディアが叩きすぎて仕事できなくなったらそれはそれで大きな損失だと思います。
相手が著名人だから叩く相手が欲しいってのがあるかもしれませんけど、そういうのはナンセンスだと思います。
医療人であってもミスはあります。自分だって何度もやらかしたことあります。
仕事辞めろ!っていうのも言われたことあります。
ですが、やりたくてやったミスなんてあるわけないので感情だけで追い詰めるのは止めていただけると医療者はありがたいと思います。
というか、医療者に限った話でもないと思うんですけどね、こういうの。
はいこれで終了。また来週もよろしくお願いします。

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